ソルティア

SOLTIAコラム
WORLD 》Vol.4

第4回は「パリ編③」

世界各地の日常をレポートする「SOLTIAコラム《WORLD》」。
「パリ」編はフランス在住の日本人アーティスト・風間明日馨(かざま あすか)さんがレポート。
​パリで暮らす風間さんの日常をお届けします。

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1.「薔薇色の空」(油彩画)​ ©Asuka Kazama

風間明日馨のパリレポート、最終回のテーマは「パリ市民の気質」。ルールに縛られない自由さと、個性を尊重した生き方についてご紹介します。

国旗のトリコロールに象徴される自由・平等・博愛の精神​

2023年1 月、フランスでは年金改革に反対する大規模な市民デモが繰り広げられました。100 万人以上が参加したこの市民デモの様子は、日本でも報道されたのではないでしょうか。現役で仕事をしている人々をはじめ、学生やリタイアしたシニア世代も市民デモに参加。2023年7月現在もまだ完全には収束していません。ゴミ収集などを担う公務員もストライキに参加したためパリにはゴミがあふれ、公共交通機関も運休になり、「ルーヴル美術館」や「エッフェル塔」もクローズされるなど、大混乱に陥りました。

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2.公務員のストで街に溢れるゴミ袋。​

はじめは声高に主張する市民デモに少し恐怖を感じましたが、よく見ると参加者はみんな活気にあふれ、元気いっぱい。このような市民デモやストライキは政治に対する抗議に留まらず、国民の主張であり、真のデモクラシーを求める場なのだそう。市民が蜂起し、自由・平等・博愛を手にしたフランス革命から脈々と受け継がれている国民性なのかもしれません。

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3.2016年から通っているカフェ​「コントワール・ド・サンペール」。​パリ人の気質を垣間見られるお気に入りの場所。

そんな行動や考え方は、家庭でも見受けられます。先日、パリジェンヌの友人に誘われて彼女の叔母さんの家に遊びに行きました。そこで見たのは、ゴミを収集所に出しに行かない夫に対抗して、ゴミ出しを放棄している叔母さんの姿。別の友人宅でも、買い物も料理もしないパートナーに対抗して、冷蔵庫をからっぽにして待つ友人の姿がありました。

言葉でわかってもらえない場合は行動で示す。相手を思いやらない、感謝が足りないといった「見えない暴力」には無言で抗議する。そんなフランス流の対処法がとても新鮮に映りました。​

ルールに縛られない自由さと個人を尊重する生き方に共感​
エネルギーが充満するパリ

私がフランスでアート活動を行う道を選んだのは、芸術や文化の奥深さに加え、ルールに縛られない自由さと個人を尊重する生き方に惹かれたからです。ただし自由とルーズは表裏一体、協調性が欠けているのも事実です。

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4.「パリ東」駅に置かれている誰でも​自由に弾けるピアノ。パリの駅には大きな​ピアノが置かれている所も多い。

時間を守らない、約束を破るといったことは、フランスでは日本よりも寛容に受け止めてもらえます。徹底した個人主義、普通の日本人には理解できないほどの自由奔放さ、そして、暮らしてみてわかった、目に見えない階級社会とコネ社会。

そんな苦労を差し引いてもあまりあるほど、ここには自由闊達な創造を応援する空気や個性的な作品づくりを後押ししてくれるエネルギーが充満していて、たくさんの刺激を与えてくれます。

5.1ユーロで利用できる駅のトイレ。​ノートルダム大聖堂の壁紙がデコラティブ​過ぎて、ちょっと落ち着かない。​
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6.クラッシックカーを模した花屋さん。パリではこういう自由な発想が街のいたる所に。​

それぞれの主張がぶつかり合う中、プライドも高い人が多いといわれるパリで暮らしていくには、それなりの馬力と根性が必要です。それでもそのすべてを受け入れながら、私はこれからもこの街で、アーティストとして活動していきたいと願っています。

それは、どこか生きづらさを感じていた日本よりも、表現することの自由を与えてくれたパリやフランスの空気のほうが、私には合っていると感じるからです。

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7.観光客や地元の買い物客で​活気を取り戻した百貨店​「ギャラリー・ラファイエット」​
8.「ルーヴル美術館」にも大勢のツーリストの姿が。​

みなさんがパリを訪れたときには、一見オシャレでスマートに見えるパリジャンやパリジェンヌの振る舞いに、じつはこんな一面も潜んでいることを心に留めて観光してみると、パリの風景がひと味違って見えてくるのではないでしょうか。日本人のように察してくれることは少なくても、求めていることを臆さず言葉で伝えれば、パリの人々はきっと親切に接してくれることでしょう。観光する際には、地元の人たちに思い切って心を開いて、私の大好きな、この美しく、自由を重んじるパリを、心の底から堪能することをオススメします。

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9.よく晴れた夏の「サンジェルマン・デ・プレ」。​ラグジュアリーで洗練されたパリで人気のお散歩エリア。
10.現在制作中の自画像。油彩。©Asuka Kazama
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1980年東京生まれ。2003年共立女子大学仏文コース卒業後、広告代理店勤務を経て、
2007年ストラスブール大学デザイン科卒業。2010年HEARストラスブールアート科造形美術学士卒業。
2014年ストラスブール大学造形美術大学院卒業。
2012年ストラスブール美術館とアートの協会が主催する「テオフィルシュラー賞」を受賞。
近作としては、夢で見た動物と人間の中間的な生物の姿を描いた架空の生き物のシリーズを創作。
2023年11月には「国際現代アートスタート展」においてストラスブール美術館とアート協会の枠で作品を展示予定。 風間明日馨 ホームページ asukakazama.net