ソルティア

SOLTIAコラム
WORLD 》Vol.2

第2回は「パリ編①」

世界各地の日常をレポートする「SOLTIAコラム《WORLD》」。
「パリ」編のレポーターはフランス在住の日本人アーティスト・風間明日馨(かざまあすか)さんです。2024年夏季オリンピックでも注目を集めるパリのリアルな空気を3回にわたってお届けします。

「パリの風景」油彩画 ©Asuka Kazama

こんにちは!風間明日馨です。私はパリを拠点に活動しているアーティストです。楽しい中にいろいろと苦労もあるパリの日常を、「パリの今」、「パリのアート事情」、「パリ市民の気質」という3つのテーマでご紹介します。初回のテーマは「パリの今」について。

“QualiPARIS(カリパリ)”

2024年に夏季オリンピックが開催されるパリでは、“QualiPARIS(カリパリ)”というキャッチフレーズのもと、さまざまな機関が質の高いサービスの提供を目指しています。例えば、文書によるクレームには1カ月以内に、電話受付には25秒以内に応答する、という基準が設けられていて、必要に応じて責任者に会うことができるなど、受付業務や各種相談、情報アクセスといったサービスの向上に取り組んでいます。

カリパリの目標水準を満たした施設にはラベルが与えられる仕組みで、現在では「ブローニュの森」や「ヴァンセンヌの森」をはじめ、800以上の施設がラベルを取得。より安心でより快適な街づくりが進んでいます。

1
1.カリパリのシンボルマーク。

カリパリの目標水準を満たした施設にはラベルが与えられる仕組みで、現在では「ブローニュの森」や「ヴァンセンヌの森」をはじめ、800以上の施設がラベルを取得。より安心でより快適な街づくりが進んでいます。

2
1.カリパリのシンボルマーク。
2.ブローニュの森。

また、パリでは、街の機能をもっとシンプルにして、人々がもっと円滑にコミュニケーションできるように、デジタル技術も積極的に導入しています。

飲食店では、コロナ禍以降、紙のメニューを置かず、スマートフォンでコードを読み込んで注文するスタイルが定着。メトロの切符も電子パスに切り替わり、スマートフォンひとつであらゆるものが決済できるようになりました。スマート&スムーズ、かつ物理的な接触を減らして感染リスクを低減させようという施策です。​

3
4
3.新しく導入されたメトロの​乗車券売機​。
4.デジタル化が進むメトロの案内掲示。​
5
5.「ルーヴル美術館」を照らす東芝のLED。

「人間のエゴ」と「自然のエコ」に揺れるフランス​

フランスは2022年夏に大規模な干ばつに見舞われ、2023年も雨が降らない期間が観測史上最長を記録するなど、環境問題が深刻さを増しています。そんな中で環境意識の高まりとともに、街のあちこちで環境を守る施策を見かけるようになりました。

街灯の大部分はLEDに代わり、「ルーヴル美術館」の照明はなんと東芝のLEDに!パリの日常を日本の技術が支えていることに、日本人としての誇らしい気持ちになりました。​

5
5.「ルーヴル美術館」を照らす東芝のLED。

ほかにも、二酸化炭素の排出量を削減するため、買い物の際には店舗スタッフが「紙のレシートが必要ですか?」と尋ねることが義務付けられています。すでにアップルストアなどでは紙のレシートはなく、メールで送られてきます。

電気料金の請求書も数年前からメールに切り替わっています。請求書には「あなたが使用した電気で排出した二酸化炭素は○○gに値します。CO2/○○kWh」と明記されていて、「昨年同月より電気を使用しなかった場合は割引特典があります」とエコ活動を支援する制度も案内されています。

6
6.メールで送られてくる​電気料金の明細書。​使用料が減ると割引特典​が付いてくる。
7.レンタル自転車も手軽でエコな交通手段として人気。​
7
7.レンタル自転車も手軽でエコな交通手段として人気。

さらに飲食店でも、再利用できない容器は使用できなくなりました。大手ファストフード店のフライドポテトの容器も繰り返し使えるプラスチック製に代わり、「デザインがかわいい!」と容器を持ち帰る人が続出しました。容器の購入費を行政が援助するなど、官民一体となって環境保全に取り組んでいます。

8
8.デリバリーのロスを防ぐのもエコ。ショッピングセンターに設置されている、宅配用のボックス。

ファッション業界にもエコ意識が浸透しています。街には衣料品などを回収するリサイクルボックスが設定され、リユースショップも続々オープン。ファッションの街らしく店内には有名ブランドの洋服がならび、人気を集めています。

9
9.街のいろいろな場所に設置されている、衣類などを入れるリサイクルボックス。​
10
10.「ギャラリー・ラファイエット」にオープンしたリユースショップ。​店内にはブランド品がズラリ。

環境問題の解決に向けて、進化を遂げようとしているパリ。その機運はアートの世界にも波及しています。
次回はその新たなトレンドについてレポートします!

1980年東京生まれ。2003年共立女子大学仏文コース卒業後、広告代理店勤務を経て、
2007年ストラスブール大学デザイン科卒業。2010年HEARストラスブールアート科造形美術学士卒業。
2014年ストラスブール大学造形美術大学院卒業。
2012年ストラスブール美術館とアートの協会が主催する「テオフィルシュラー賞」を受賞。
近作としては、夢で見た動物と人間の中間的な生物の姿を描いた架空の生き物のシリーズを創作。
2023年11月には「国際現代アートスタート展」においてストラスブール美術館とアート協会の枠で作品を展示予定。 風間明日馨 ホームページ asukakazama.net